8.鳥精進(とりしょうじん)酒精進(さかしょうじん)
               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  河津町(かわづまち)




















  三方(さんぽう)(あお)(やま) が、幾重(いく) にもとりまき、

一方(いっぽう) は、(あか) るい伊豆(いず)(うみ)(めん) した河津(かわづ)(さと) に、

杉鉾別命(すぎほこわけのみこと) という(わか)(かみ)() んでいました。

平地(へいち) は、(ゆた) かな(みの) りを約束(やくそく) された() んぼが、

一面(いちめん)(ひろ) がり、

(ちか) くの山々(やまやま) には、大木(たいぼく) がおい(しげ) り、

小鳥(ことり) のよい()() となっていました。

それで、(みこと) は、いつも小鳥(ことり) のさえずりを() きながら、

さわやかな気分(きぶん) で、()() ますのでした。
  ですから、(みこと)()ながらにして、(すべて) てのことがわかったので、安心(あんしん) して毎日(まいにち)

  (たの) しく() らしていました。

  (さと)人々(ひとびと)() らしも(ゆた) かでした。

 () んぼでは、たくさんの()(こめ) ができ、(うみ) からは、

 (さかな)(かい) がどっさり() れるので、(さと)人々(ひとびと)(こころ) ものびやかでした。
  (みこと) は、こうした里人(さとびと)(さけ)() みかわして、おどったり、(うた) ったりするのが大好(だいす) きでした。

それで、(さと)人達(ひとたち) も、(めずら) しい(もの) が、()(はい) ったり、おいしいご馳走(ちそう) をこしらえたりすると、

いつも(みこと) のところへもって() て、一緒(いっしょ)(さけ)() むのを(たの) しみにしていました。

そのうえ、この(さと) は、(みず) はきれいで、おいしいし、よい(こめ) もとれるので、

()(くら) べようもないくらい、うまい(さけ) ができました。
  (さけ) があんまりうまいので、(みこと) は、いつも()() ぎ、

  ところかまわず寝込(ねこ) んでしまうのでした。

  すると、小鳥(ことり)() って() て、(みこと) のからだにとまったり、

 あたりを(とび) びまわったりして、(みこと)(まも) っていました。

 ある(とし)() れのことでした。

 (ひさ) しぶりに、(やま)() まわりを(おも) いついた(みこと) は、

 大好(だいす) きな(さけ)() って() かけました。

 すすきの穂並(ほなみ) みが、銀色(ぎんいろ)(ひか) って、

 いかにも(あたた) かそうな場所(ばしょ)()たので、一休(ひとやすみ)みをして、

 ()って()(さけ)()(はじ)めました。

 () もなく、(さけ)()() した(みこと) は、()() ましました。
  いつのまにか、()(あが) がった野火(のび) が、生木(なまき)(あぶら) に、

 ますます(いきお) いを() し、大地(だいち)() けるような(おと)() て、

 (てん)() がすばかりに、あたりをとりまいていました。

 しまったと、今更(いまさら) 後悔(こうかい) しても、どうしようもありません。

 必死(ひっし) になって、かけめぐりましたが、

 (みこと) もやこれまでと覚悟(かくご)(○き)めました。

 すると、その(とき)(てん)一角(いっかく) から、次第(しだい)(そら) をおおって、

 (ちか) づいてくる小鳥(ことり)大群(たいぐん) がありました。

 そして、(みこと) のいるあたりに() ると、(つよ)() ばたいて、

 時雨(しぐれ) のような(あめ)() らせました。
  小鳥(ことり)羽根(はね) はぬれていました。

 一羽(いちわ)羽根(はね) のしずくでも、(なに) しろ(そら) をおおうばかりの大群(たいぐん) ですから、

 (あめ) のように()(そそ) ぎました。

 何千何万(なんぜんなんまん) という大群(たいぐん) が、() れかわり、たちかわりして、

 (あめ)() らせたので、さすがの野火(のび)次第(しだい)(おとろ)え、

 (みこと)は、あやうい、いのちを(たす)かることができました。
  (みこと) は、その()禁酒(きんしゅ) されたと(つた) えられ、

 (いま) なお、この(さと)人々(ひとびと)(みこと)(なん) にあったその()現在(げんざい) の十二(がつ) 十八(にち) から、七日間(かん)

 鳥精進(とりしょうじん)酒精進(さかしょうじん)(しょう) し、(さけ)() むこと、鶏肉(とりにく)(たまご)() べることを(きん) じられています。
  この(みこと)(まつ) った河津(かわづ)木宮神社(きのみや) には、社殿(しゃでん)(うら)大楠天然記念樹(おおくすてんねんきねんじゅ) が、

 そびえています。

 樹齢推定(じゅれいすいてい) 二千(ねん)(ふと)日本一(にほんいち)() われ、

 そばに夢安禅師(むあんぜんじ) という(ひと)() んだ(うた)石碑(せきひ)(きざ) まれています。

  ()(みや)神代(かみよ)昔偲(むかししの) ばるる
  (あお) ぐも(とおと)(くす)大森(おおもり)
 この石碑(せきひ)(まえ) にたたずみ、大楠(おおくす)大樹(たいじゅ)(あお)() ていると、

 往古(おうこ)時代(じだい) から() きていた、

 この大楠(おおくす)(はな) しかけたいような気持(きもち) ちが、せまってきます。
大鳥居(おおとpりい) 参道(さんどう)
鳥居(とりい) 神殿(しんでん)
狛犬(こまいぬ) 扁額(へんがく) 狛犬(こまいぬ)

 

  加 藤  寿

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