3. 和尚(おしょう)さんといたずら(きつね)

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  東伊豆町(ひがし いずちょう)






  むかし、稲取(いなとり)にあったお(はなし)です。

 ()()れようとしていた(むら)広場(ひろば)で、

 おおぜいの人々(ひとびと)(あたま)をよせあって
   志津摩(しずま)のきつねに、

 どうしたら いたずらされないですむかと、

 相談(そうだん)していました。

 「わなをかけたらあ いい。」

 「鉄砲(てっぽう)でうつのがよかるべえよ。」

 「鉄砲(てっぽう)でうっちゃかわいそうだよ。」

 と、なかなかよい(かんが)えがみつかりませんでした。
  「そうだ、正定寺(しょうじょうじ)のおしょうさんに ()いてみるべえ。

 おしょうさんは、ちえがある おかただもの。」

 と、五郎(ごろう)じいさんが()ったので、みんな賛成(さんせい)しました。

 お(てら)()かけると、

 おしょうさんは、(よる)のおつとめがちょうど、おわったところでした。
  さっそく、(むら)(ひと)たちが、きつねの(わる)さの(はなし)をすると、 

 「うーん」 と、

 おしょうさんは、(うで)ぐみをして かんがえこんでしまいました。

 しばらくすると、おしょうさんは、(なに)(かんが)えたか、 

  「よし、よし、よし。」 と、 いいながら()()がりました。

 そして、

 物置小屋(ものおきごや)から使(つか)(ふる)しの雨傘(あまがさ)()って志津摩(しずま)

 ()かけていきました。
  村人(むらびと)たちは、どうなるもとかと心配顔(しんぱいがお)見送(みおく)りました。

 おしょうさんは、

 (むら)はずれのお地蔵様(おじぞうさま)(ところ)(こし)をおろして、

 ひとりごとを()(はじ)めました。


 「わたしの(てら)(つた)わるふしぎな(ちから)をもつ(かさ)だ。

 きつねがさすと、人間(にんげん)()えると()(つた)えがある。

 となりの作平(さくへい)じいさんが、ほしがるのも無理(むり)がないなあ。

  おっと、こんな(はなし)をきつねに()かれたらたいへんだ。 

 ああ、(とし)()ると、いらないことまで、おしゃべりしてしまう。

 お地蔵(じぞう)さん、おやすみよ。」  と、()いながら、

 ちょうちんに()()れる(とき)、お地蔵様(じぞうさま)のわきに、

 あんなにたいせつだといった(かさ)を、おき(わす)れました。
  地蔵様(おじぞうさま)(うしろ)ろで、この(はなし)()いていた きつねは、 

 「シメ、シメ」

 と、あのふといしっぽを、二、三(かい)(おお)きくふってよろこびました。

 きつねは、(かさ)()つと、ためしてみたくなりました。

 そして、

 おしょうさんの()(みち)(さき)まわりして、

 おしょうさんの(まえ)に たちふさがって、

 「おしょうさん、おばんです。」 と、

 あいきょうたっぷりに()いました。

 おしょうさんは、 

 「どこのおかただな、ちょっと おみかけしない おかただが。」

 と、もの(しずか)かに たずねました。
  きつねは、  「どこのおかただね。」 と、

 ()われたことばに ()をよくして、

 志津摩(しずま)にかえって()きました。

 おしょうさんは、

 (むら)人々(ひとびと)()っている正定寺(しょうじょうじ)(いそ)ぎました。 
  お(てら)に着くと、 「(むら)(しゅう)よ、志津摩(しずま)()ってきましたよ。

 これからは、『見海山(けんかいざん) 正定寺(しょうじょうじ)』と ()いてある(かさ)をさして、

 きつねが()てくると (おも)うよ。
  おなかのすいている きつねが、
 
 ()(もの)ほしさに()てくるのだから、

 そのときには、()っているものを、わけてやって(くだ)さいよ。

 (わる)いいたずらも しなくなると(おも)うよ。」

 と、村人をさとすように (はなし)しました。
  村人(むらびと)は、おしょうさんの(はなし)にうなづき、安心(あんしん)して(いえ)(かえ)りました。
 
 こういうことがあってから、

 きつねが()てきても、志津摩(しずま)(とお)村人(むらびと)は、
 
 (わる)いいたずらや、

 (こま)ることに出会(であ)うこともなくなったということです。


 
  そして、いつとはなしに、きつねは、志津摩(しずま)(やま)()え、

 どこか(とお)(ところ)()ってしまいましたということです。 
  「あのきつねは、どこへ()ったんだろうなあ。」

 「しっぽの大きい、()のかわいいきつねだったなあ。」

 「元気(げんき)でいるだろうなあ。」

 野山(のやま)(はた) 村人(むらびと)たちの(あいだ)には、こんな(はなし)がかわされていました。
見海山(けんかいざん) 正定寺(しょうじょうじ)は、稲取東町(ひがしいずちょう)にあるお(てら)です。
鐘突堂(かねつきどう) 見海山(けんかいざん) 正定寺(しょうじょうじ) 大仏(だいぶつ)さん

 
        
               
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