23.(おおかみ)(おん)がえし

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  西伊豆町(にしいずちょう)


















むかしむかし、

ずっとむかしの(はなし)です。

そのころの大沢里(おおそうり)

宇久須(うぐす)(みなと)仁科(にしな)(さと)

(つう)ずる(みち)もないので、

里人(さとびと)たちは自分(じぶん)たちだけで

ひっそりと(くら)らしていました。
  (むら)はずれに権十(ごんじゅう)さんというお百姓(ひゃくしょう)がいました。

 権十(ごんじゅう)さんは、(はたら)きもので、お人好(ひとよ)しですが、

 すこしあわて(もの)のところがありました。

 田植(たうえ)えもすんだある()権十(ごんじゅう)さんは草刈(くさか)りに(やま)(のぼ)りました。
  草刈(くさか)()(むら)のなかまの草原(そうげん)だから、

 足場(あしば)のいいところは(はや)者勝(ものが)ちで、

 もう大勢(おおぜい)(ひと)(くさ)()っていました。

 権十(ごんじゅう)さんは、わざと足場(あしば)(わる)いところを(えら)びました、

 さすがに、ここはだれもよりつかなくて、(ひと)はひとりも()えず、

 やわらかい(くさ)一杯(いっぱい)はえていました。
  (こころよ)(かぜ)が、(くさ)のさきをなぜていました。 

 「よし、きょうはうんと()ってやるべえ。」

 権十(ごんじゅう)さんは、念入(ねんい)りにといだかまを(にぎ)って()りはじめました。 

 「サク、サク、サク。」

 やわらかいくさは面白(おもしろ)いように()れてたちまち青草(あおくさ)(やま)ができました。
   どんどんと(かり)すすんでいるうちに権十(ごんじゅう)さんは

、「はっ。」として かまの()()めました。

 ()(まえ)ー匹(いっぴき)(おおかみ)がじっとこちらをみているのです。 

 権十(ごんじゅう)さんは心臓(しんぞう)がとまったかと(おも)いました。
  (くさ)むらがかすかに(おと)をたてて()っていました。

 権十(ごんじゅう)さんはかまを()りあげて()がまえました。 

 ところが、

 (おおかみ)はこちらへとびかかってくるような気配(けはい)はありません。

 それどころか(おおかみ)はしっぽをふって、

 まるで(いぬ)(あま)えているようなしぐさをしているのです。

  権十(ごんじゅう)さんは、()をしずめて、じっと(おおかみ)()つめると、

 (おおかみ)は何かを(はなし)しかけるように(おお)きな(くち)をぱっくりと(じら)きました。

 なんとしたことでしょう。 

 ぱっくりあいた(おおかみ)(くち)(なか)(おお)きな(ほね)がささっていたのです。
   「なんだ。お(まえ)はその(ほね)をとってくれというのか。」 

 権十(ごんじゅう)さんは(おそ)る恐る(おおかみ)(ちか)づきました。

 (おおかみ)はしっぽを()って 「(はや)くとってくれ。」 と

 いうように、からだをすりよせてきました。
  「よし、よし、(いま)とってやる。 

 そのかわり、おれにくいつくでないぞ。」

 といいながら、(おも)()って きばの()えた、

 まっかな(おおかみ)(くち)(なか)()を入れて、なんなく(ほね)()()りました。
  「それっ! いそいで(かえ)れ。 

 猟師(りょうし)()つかったらひどいめをくうぞ。」

 そのことばのおわらぬうちに(おおかみ)はぱっととびおきて

 (ひかり)もののように草刈(くさか)()(おく)へかけこみました。
  つぎの朝、足場(あしば)さんは(はや)()がさめて井戸(いど)ばたへおりたが、

 雨戸(あまど)(そと)()いてある(いのしし)をみつけてびっくりしました。

 「みんな(はや)く起きてみろ、(いのしし)だ、(いのしし)だ。

 すごくいかい((おお)きい)(いのしし)がおいてあるぞ。」
  みんなが()てきてびっくりしました。

 権十(ごんじゅう)さんはあの(おおかみ)が、お(れい)のため、(よる)のうちに、

 この(いのしし)(はこ)んできて()いていったにちがいないと(おも)いました。
  権十(ごんじゅう)さんは、草刈(くさか)()にいけば、

 あの(おおかみ)にあえるかもしれないと(おも)って

 きのうの場所(ばしょ)()きましたが、(おおかみ)()てきませんでした。
  (つぎ)()も、(つぎ)()()うことはできませんでした。

 草刈(くさか)りの季節(きせつ)になると権十(ごんじゅう)さんは、いつもあの場所(ばしょ)()って(おおかみ)()てくるのを()ったそうです。
大沢里(おおそうり)部落(ぶらく)
大沢里(おおそうり)部落(ぶらく)

 
    
え  加畑  真喜

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