12.おまつ の えご

               


(はなし)場所(ばしょ) ・・・  下田市(しもだし)



















その(むかし)越瀬(おっせ)部落(ぶらく)

須崎小町(すざきこまち) といわれるほど、

(うつく) しい(むすめ) がおりました。

 名前(なまえ) を「おまつ」といい、

きだてもやさしく、

とても(はたら)(もの) でした。
  おまつは、ちいさい(とき) に、父親(ちちおや)(いみ) でなくし、母親(ははおや)二人(ふたり) ぐらしだったので、

 かつぎ(海女(あま) )になって、母親(ははおや)手助(てだす) けをしていました。
  おまつを、およめにほしいという(おとこ)(むら)(なか) だけでなく、

 近郷近在(きんごうきんざい) から、たくさんありましたが、

 およめの(はなし)には、(みみ)もかさず、

 かつぎの仕事(しごと) に、せいを() していました。
  今年(ことし)(うみ) にもぐる季節(きせつ) になったのですが、
  どうしたわけか、(うみ)があれて、かつぎ(たち) は、ほとほと、こまりはてていました。
 (うみ) があれているからといって、

 みんなと(おなじ) じように、(あそ) んでいるわけにはいきません。

 おまつは、母親(ははおや)反対(はんたい) をおしきって、平磯(ひらいそ)()きました。

 すると、どうでしょう、どこの(うみ)もあれているのに、

 平磯(ひらいそ)の「えご」だけは、(なみ) み一つなく(しずか) かでした。
  さっそくしたくをすると、えご((ふか) み)にもぐると、(おお) きなたこがのんびりと、(ひる)ねをしています。

  (あし)(なが) さは、一メートルもあります。

 平磯(ひらいそ)には、、たこの(ぬし)がいると、(むら)年寄(としより) りに()いてはいましたが、

 きっと(ぬし)にちがいありません。

 もりをかまえて、たこをめがけて()げますと、たこはするりとかわします。

 かわすだけで、にげようとも、むかってこようともしません。
  やっとのことで、(あし)一本(いっぽん)だけ()りとりました。

 あまつの()って()た、たこの(あし)()て、母親(ははおや)も、近所(きんじょ)人達(ひとたち)も、おどろきました。

 「きっとこれは、(ぬし)のあしだよ。たたりがなけれないいが。」と、心配(しんぱい)しました。

 二人(ふたり)()っても、()いきれないので、(となり)近所(きんじょ)にわけてやったが気持(きも)(わる)がって、

 ()おうともしませんでした。

 (つぎ)()も、(いみ)があれているというのに、おまつは平磯(ひらいそ)のえごに() きました。

 そして、また、(あし)一本(いっぽん)()って(かえ)りました。   (つぎ)()も・・・・・。

 (つぎ)()も、おまつはたこの(あし)()って、(かえ)りました。
  毎日(まいにち)のことなので、はじめ気味悪(きみわる)がって、()わなかった近所(きんじょ)の人達も、

 ()ってみて、そのおいしさに(した)をまきました。


 ちょうど、八日目(ようかめ)でした。

 おまつはいつもとかわらず、平磯(ひらいそ)()きました。

 おまつはわき()もふらず、「えご」にもぐりますと、

 やはりたこが一本(いっぽん)だけ(のこ)った(あし)()して、

 ねていました。

 おまつは、今日(きょう)最後(さいご)だと、もりをかまえて、たこにつきだしました。

 たこは、一本足(いっぽんあし)を、おまつのからだにまきつけて、ぐいぐい()() んでしまいました。
  (よる)になっても、おまつは(かえ)ってこないので村中(むらじゅう)、おおさわぎになりました。

 村人(むらびと)が、おまつの(いえ)(あつ)まり、()()にたい(まつ)()って、(いそ)をさがしました。

 おまつの()がかりは、(つぎ)()になっても、ありません。

 「おまつが、あまりにも(うつく)しかったので、たこのやつ、おまつをほしくなったのだ。」

「そうだ。 そうだ。」

 「たから、自分(じぶんたち)(あし)七本(ななほん)もやって、おまつを()()せたのだ。」

 村人達(むらびと)は、口々(くちぐち)にいいました。
 
  
(むら)(わか)(しゅう)が、「えごに」てんでにもぐって、おまつをさがしましたが、

 おまつの姿(すがた)だけでなく、たこの姿(すがた)() えませんでした。

 それから、この「えご」を、村人(むらびと)は 「おおまつのえご」とよぶようになりました。

下田港内(しもだこうない)(はし)るサスケハナ・・・前方(ぜんぽう)須崎半島(すざきはんとう)

 
 
え  笹本 かおり

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