7.河津(かわづ)七滝(ななだる)

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  河津町(かわづまち)




















  その(むかし)

 日本(にほん) に、天狗(てんぐ) というものが、

 () んでいたころの(はなし) です。

 伊豆(いず)(くに)天城連峰(あまぎれんぽう) の一つ、

 万三郎岳(ばんざぶろうだけ) に、万三郎(ばんざぶろう)という天狗(てんぐ)

 (うつく) しい(つま)二人(ふたり) で、

 (しあわ) せに() らしていました。

  万三郎(ばんざぶろう)は、(わか) くて、() がやさしく、とても(ちから) がありました。

 毎日(まいにち) 、あたりの野山(のやま)() びまわり、たくさんの獲物(えもの)() ってきました。

 今日(きょう) も、万三郎(ばんざぶろう) は、元気(げんき)() かけました。

 万三郎(ばんざぶろう)(つま) は、

 (おっと) のいない() に、洗濯(せんたく) をすませてしまおうと、天城(あまぎ)八丁池(はっちょういけ) で、

 その(うつく ) しい(かお) を、水鏡(みずかがみ)(うつ) しながら、気持(きもち) ちよさそうに、洗濯(せんたく) をしていました。

 ふと、(なに) かの気配(けはい)(かんじ) じたので、(おも) わず(かお) をあげ、

 あたりを() まわしましたが、(まに)() あたりません。

 そのまま洗濯(せんたく)(つづ) けていました。

 今度(こんど) は、(かぜ) もないのに、あたりの()(くさ) が、ざわざわと(おと) をたてて(ゆれ)(うご) きました。
  (おどろ) いた万三郎(ばんざぶろう)(つま) は、あわてて()() がりますと、

 なんと、(なな) つの(あたま) のある、それはそれは(おお) きな大蛇(だいじゃ) が、ねらっているではありませんか。

 万三郎(ばんざぶろう)(つま) は、まっ(さお) になり、(なが)(かみ) をふりみだし。

 (いのち) からがら(にげ)(かえ) りました。

 やがて、(かえ) ってきた万三郎(ばんざぶろう) は、(つま) からその(はなし)() くや

 (うで)() んで(かんが) えました。

 これは大変(たいへん) なことになった。

 このままにしておくと、いつ自分(じぶん)(つま) が、

 やられてしまうかわからない、(なん) とかして、

 そのものすごい大蛇(だいじゃ) をやっつけてしまわないと、安心(あんしん) できないぞ。

 しばらくして、万三郎(ばんざぶろう) は、よいことを(おもい) いつき、(つま)(はな) しました。

 それは、(つよ)(さけ) をたくさん(つく) って() ませ、すきを(、い) て、やっつけようと() うのでした。
  二人(ふたり) は、さっそく酒造(さけづくり) りに(はげ) みました。

 そして、出来上(できあが) がった(さけ) を、(おお) きな(なな) つのたるに() れ、八丁池近(はっちょういけちか) く、あちらこちらと() きました。

 もともと(さけ)() きな(へび) のことですから、

 きっと(さけ)(にお) いをかいで大蛇(だいじゃ) がやって() るにちがいありません。

 万三郎(ばんざぶろう) は、(つるぎ) をにぎりしめて、姿(すがた) をかくし、大蛇(だいじゃ)(あらわ) れるのを() ちました。

 やがて、空模様(そらもよう) があやしくなり、あたりの(やま)木々(きぎ) が、(おと) をたてて、ゆれ(はじ) めました。
  (おも) った(とお) りでした。

 (なな) つの(あたま) をふりふり、(おお) きな(くち) から()() きながら(あら) れた大蛇(だいじゃ) は、

 たちまち(なな) つの(さか) だるを() つけ、がぶがぶ()(はじ) めました。

 (なに) しろ、(おお) きなたるが、(なな) つもあるのですから、さしもの大蛇(だいじゃ) もすっかり() いがまわり。

 そのまま寝込(ねこ) んでしまいました。

 それを()万三郎(ばんざぶろう) は、(つるぎ)() いて大蛇(だいじゃ)(なな) つの(くび) を、

 ひと) つ、また、ひと)つと、()(おと) としていきました。
  (そら)(あか) るくなりました。

 すると、どうしたことか、大蛇(だいじゃ)(からだ) は、みるみるうちに、(かわ) となり、

 (なな) つの(くび)()(くち) は、(たき) となって(なが) れました。

 こうした(はなし)(つた) えられ、いつのことからか、

 河津(かわづ)七滝(ななたき) のことを七滝(ななだる)() ぶようになりました。

 (いま) も、この七滝(ななだる) は、(みず)() れることもなくその(うつく) しい姿(すがた)() せています。

初景滝周辺(しょけいだるしゅうへん)
天城(あまぎ) ・ R414のループ(きょう)全国的(ぜんこくてき) にも、めずらしい(はし)です
河津七滝(かわずななだる)から、ここ、滑沢渓谷(なめさわけいこく)のわさび(ざわ)(とお)って、浄蓮(じょうれん)(たき)までハイキングコースです。

 

え 鈴木 健也

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