29.かぼちゃを(つくら)(さと)

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  賀茂村(かもむら)


















むかし、むかし

宇久須(うぐす)(さと)にあったお(はなし)です。

戦国時代(せんごく)(ころ)

たったひとりの武者(むしゃ)が、

宇久須(うぐす)(さと)

()げのびてきました。
  この武者(むしゃ)は、きのどくなことに、

 ()()から(のが)れるために駿河(するが)(くに)より小舟(こぶね)にのって、

 (うみ)(わた)って宇久須(うぐす)にたどりついたのでした。
  (ひん)のよい武者(むしゃ)でしたが、

 村人(むらびと)にひどく()をつかい、

 つねにおびえているように()えました。

 (ひん)のよいこの武者(むしゃ)を、宇久須(うぐす)里人(さとびと)は、ていちょうにもてなし、

 かくれ()にかくまって、()()には、

 ぜったい(わた)すものかと相談(そうだん)しておりました。
  ()()は、やがて宇久須(うぐす)(さと)にもやってきました。

 (うま)()った()()一隊(いったい)は、武者(むしゃ)人相(にんそう)などを()いながら、

 「このような(かお)をした(もの)()なかったか。」 

 「ごろ、このあたりに()(もの)は、いないか。」

 と、きびしい(こえ)()(まわ)りました。
  しかし、里人(さとびと)たちは、

 かたく(くち)をとざして、だれひとりとして、

 武者(むしゃ)のことを()(ひと)は、ありませんでした。

 里人(さとびと)土蔵(どぞう)(なか)に、かくまってもらっていた武者(むしゃ)は、

 これらのことを()いていました。
   これいじょうかくまってもらっては、 

 (さと)家々(いえいえ)にめいわくがかかるので、

 武者(むしゃ)は、()()ではありませんでした。

 ()()は、一軒一軒(いっけんいっけん)、しらみつぶしに調(しら)(はじ)めました。
  武者(むしゃ)は、親切(しんせつ)にしてくれた(さと)百姓(ひゃくしょう)たちに

 めいわくをかけてはならないと(かんが)え、

 たまりかねて、かくれていた土蔵(どぞう)より、

 ひそかに、百姓(ひゃくしょう)姿(すがた)()をかえて、野良(のら)()()きました。
   しかし、なんとなくすました(ひん)のよい(かお)つきが、

 かえって()()に、うたがわれることになってしまいました。

 ()()が、あれこれと身分(みぶん)()きただしました。
  武者(むしゃ)はこれまでと、かくし()っていた(かたな)()いて、

 ()()(たたか)いをいどみました。

 ちょうど季節(きせつ)(なつ)

 このあたりの(はたけ)には、かぼちゃが(つく)られていました。
  いかに、(つよ)武者(むしゃ)でも、ひとりでは、かないませんでした。

 とうとう、(てき)()()けて()げなければなりません。

 武者(むしゃ)は、かぼちゃの ごろごろころがっている(はたけ)(なか)を、

 ()げて()きました。

 武者(むしゃ)は、かぼちゃのつるに(あし)をとられたおれてしまいました。
  ()()は、のがすまいと、

 いっせいに武者(むしゃ)におそいかかりました。

 武者(むしゃ)は、ついにとらえられてしまいました。

 そして、あわれにも、このかぼちゃ(はたけ)で、

 (くび)()られてしまいました。

 里人(さとびと)たちは、この()のどくな武者(むしゃ)最後(さいご)(かな)しみました。

  「おらが、かぼちゃなんど(つく)っていなかったら、

 (ころ)されないですんだずらに・・・・・。」

 「おらが、わるかったんだよー。」

 「おさむらいさん、かんにんしろやー。」

 と、(なみだ)をいっぱいため、いのるように、わびをしていました、

 このことがあってから、宇久須(うぐす)(さと)では、かぼちゃをつくることはありませんでした。
仁科峠(にしな)高原(こうげん)絶景(ぜっけい)
仁科峠高原(にしなこうげん)から駿河湾(するがわん)遠望(えんぼう)

 
 
え  鈴木 彩子
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