14.(はし)()

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  下田市(しもだし)


















むかし、

大賀茂(おおがも)大平山(おおひらやま)をはさんだ

ところにある蓮台寺(れんだいじ)神様(かみさま)

()() りあいをして

(たたか)いました。
  大賀茂(おおがも)神様(かみさま)は、ずいぶんのん()神様(かみさま)でした。

 小春日和(こはるびより) のうららかな天気(てんき)(つづ)

 のんびりと()かげで昼寝(ひるね) をしていました。

 (あし) もとには(おお) きな(あか) いつぼにいっぱいのお()がおいてありました。

 蓮台寺(れんだいじ)神様(かみさま)は、

 かねがね大賀茂(おおがも)のお()をほしいと(おも)っていましたので、

 いつもすきをうかがっていました。
  「しめた。 しめた。 のん()昼寝(ひるね)している。」

 蓮台寺(れんだいじ)神様(かみさま)は、(しろ)(くも)(うえ) から見下(みお) ろしてよろこびました。

 そして、(あか)いつぼごとお()(ぬす) んでいこうとおりてきました。
   お()のこぼれる(おと)()をさました大賀茂(おおがも)神様(かみさま)は、

 お()(ぬす)まれたのに()づいて、

 「こら、お()(かえ) せ、こら、() てえ。」 

 と大声(おおごえ) をはりあげて蓮台寺(れんだいじ)神様(かみさま)(あと)() いかけました。
  「こらあ、お湯泥棒(おゆどろぼう) め、なんてことをする。 

 それは、だいじな大賀茂(おおがも)のお()だぞ。」

 (かお)()()にしてどなり立ててどんどん()いついていきます。

 「せっかく(ぬす)んだお()だ。 (かえ)すものか。」
   (おも)いつぼをかかえて、

 はあはあ()いながら、いちもくさんににげていきます。

 そのうちに、二人(ふたり)神様(かみさま)はへとへとにつかれてきました。

 「よいしょ、よいしょ、ぜったいに()けないぞ」

 「だれが、おまえになんかに、わたすもんか。」

 ()をからませ()って、ハァハァとあらい(いき)をはずませながら

 お()のとり()いを(つづ)けました。
   一時間(いちじかん)くらいは、とり()いが(つづ)きました。

 二人(ふたり)神様(かみさま)のあらあらしい(こえ)()きつけて、

 大賀茂(おおがも)(ほう)からも、蓮台寺(れんだいじ)(ほう)からも、

 応援(おおえん)のためにおおぜいの神様(かみさま)がかけつけました。

 はじめのうちは、地元(じもと)大賀茂(おおがも)神様(かみさま)の方が()っていました。
   しかし、(いき)せき()ってかけつけた蓮台寺(れんだいじ)神様(かみさま)も、

 あとへは()けません。

 「それ、がんばれ、がんばれ。」 

 「()けるな、大賀茂(おおがも)のお()がなくなるぞ。」

 ながいはげしいとり()いの(たたか)いが(つづ)きました。

 大平山(おおひらやま)のふもとがむらさき(いろ)にかわるころ。

 とうとう大賀茂(おおがも)神様(かみさま)(ちから)がつきてしまいました。
  「()ったぞ。お()をとったぞ。」

 意気(いき)ようようと()ちどきをあげて蓮台寺(れんだいじ)神様(かみさま)は、

 (ゆう)やみせまる(やま)あいを元気(げんき)よく(かえ)っていきました。

 (あか)いつぼの(なか)には、()けむりを()てるお()(はい)っています。
  こんなことがあってから、大賀茂(おおがも)はお()()なくなってしまいました。

 そして、蓮台寺(れんだいじ)には(あつ)いお()がたくさん()ています。

 お()(はし)ったということで、

 大賀茂(おおがも)には「(はし)湯神社(ゆじんじゃ)」と名()づけられた神社(じんじゃ)があります。
※ 大賀茂(おおがも)(みな)さんは「(はし)湯神社(ゆじんじゃ)」を

  
走湯神社(そうとうじんじゃ)とも()(したし)しまれています。
鳥 居(とり い) 扁 額(へん がく) 境内(けいだい)奉納 相撲(ほうのう ずもう)(おこな)われる)
本 殿(ほん でん)

 
 
え  武井  美知代

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