4.はんまあ さま
               



(はなし)場所(ばしょ) ・・・  東伊豆町(ひがし いずちょう)



















 むかし、むかし、

 稲取(いなとり)(ちい)さな

 漁村(ぎょそん)だった(ころ)

 お(はなし)です。
  その(とし)は、(うみ)()ても一匹(いっぴき)(さかな)もとれず稲取(いなとり)漁師(りょうし)たちは、

 (おか)にあがった河童(かっぱ)のようなもので、

 毎日(まいにち)毎日(まいにち)、ぼんやり(うみ)()()らしていました。

  そんなある()漁師(りょうし)(はま)()(とお)くの(うみ)()ていると、

 竜宮様(りゅうぐうさま)(おき)にかけて、カモメの(むれ)れが、(そら)いっぱいに(まい)()んでいました。

 「とりやまが、ついたぞ。」 

 「(りょう)が、あるぞ。」 

 「それ、(ふね)をだすぞ。」
 
  と、それはそれは、(はま)は、(いま)までの空気(くうき)とは()って()わり、

 (あか)るいにぎやかな(よろこ)(ごえ)にかわり、(ひさ)しぶりに(りょう)ができると(いきお)いこんでいました。
 
 ギー ギーコ  ギーコ    

 ギー ギーコ  ギーコ    

 ろをこぐ(ぎと)も、(ふね)のかじをとる(ぎと)も、

  とりやまめがけて、必死(ひっし)になって(ふね)(はし)らせました。

 ヨイサ コラサッ ヨイサ コラサッ

 ヨイサ コラサッ ヨイサ コラサッ
  (ふね)(はし)らせながらも、とりやまを()(さら)のようにし必死(ひっし)になっていました。

 漁師(りょうし)()は、とりやまの(した)(そそ)がれました。 すると、

 丸太(まるた)()んだイカダのようなものがあるのに()がつきました。

 一気(いっき)(ふね)が、とりやまの(した)まで()くと、イカダの(うえ)には、

 (いくさ)(やぶ)れたと(おも)われる武士(ぶし)が、()(かさ)なるようにして(いき)()えていました。
  (ひさ)しぶりに(りょう)ができ大漁(たいりょう)だと(いきお)()んだ漁師(りょうし)は、ちょっと、気落(きお)ちしてしまいました。

 しかし、そうかといって稲取(いなとり)(みなと)(かえ)って()るわけにはいきませんでした。

 (うみ)(はたら)漁師(りょうし)仲間(なかま)にとっては、

 遭難者(そうなんしゃ)があったり、仏様(ほとけさま)(なが)れていたりするのを()て、

 そのままにしておくことはできません。
  ()()ぬふりはできないのです。() きていれば救助(きゅうじょ) するか、

 仏様(ほとけさま)になっていれば、(みなと)まで(はこ) び、ほうむってやるという、

 (おきて) みたいなものがありました。
  そこで、船頭(せんどう) さんが、

 「おめーら、(いま)(りょう)がなくて、みんな(こま)っている。

 きょうもな、とりやまを()(いそ) いできてみたら、おおぜいの仏様(ほとけさま)だ。

 おめーら、() あつくほーむってやるべえ。」

 と、漁師(りょうし)たちに(おお) きな(こえ)() いました。
  たくさんのカモメが、(さかな)(むれ)(うえ)(みだ)() んでいる(うみ)(うえ) で、

 漁師(りょうし) たちは、() やけした両手(りょうて)() わせ、口々(くちぐち) にお(きょう)(とな) えました。

 漁師(りょうし)たちの(とな)えるお(きょう)(こえ) はしだいに(おお) きくなり(ひろ)(うみ)(なが) れていきました。

 (いくさ)(やぶ)れてイカダ上で仏様(ほとけさま)になった武士(ぶし)は、漁師(りょうし)たちに手厚(てあつ) くほうむられました。

 その(とし) をさかいにして、稲取(いなとり)(おき) では、イカとサンマがたくさんとれるようになりました。
  (いま)でも、稲取(いなとり)漁師(りょうし)(りょう)をさせてくれる仏様(ほとけさま)

 「ほんまあさま」

 「ほんまあさま

  と、()って、毎年(まいとし)(がつ)() ・九() におまつりをしています。

 稲取(いなとり)が、(ちい) さな漁村(ぎょそん) だった(ころ) のお話です。


(はる)稲取(いなとり)(つる)(ひな)がきれい!

  

え  加 藤  寿

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