26.(はく)さん さん

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  西伊豆町(にしいずずちょう)








 大田子(おおたご)(はま)から(のぼ)った南向(みなみむ)きの斜面(しゃめん)に、

段々(だんだん)になった墓地(ぼち)や むかしの石塔(せきとう)などを()にした

円成寺(えんじょうじ)というお(てら)があります。
  この円成寺(えんじょうじ)裏山(うらやま)(とお)っている(ふる)国道(こくどう)と、

 (あたら)しくできた安良里(あらり)トンネルの()(くち)(まじ)わるところに(たか)(やま)があります。

 こんもりとしげった、うばめの大木(たいぼく)(かこ)まれた自然(しぜん)洞窟(どうくつ)があります。
  この洞窟(どうくつ)(おく)(ちい)さな(ほこら)があって、

 その(なか)に、(ふる)二体(にたい)石像(せきぞう)(まつ)られています。

 一体(いったい)は、まるくとぐろを(まい)いた(へび)

 左右合(さゆうあわ)わせた()のひらに のせた女像(にょぞう)で、

 これが、白山妙理大権現(はくさんみょうりだいごんげん)といって、

 「白山(はくさん)さん」と()われている権現(ごんげん)さんであります。
   さて、むかしのことです。 

 この白山権現(はくさんごんげん)をとりかこむあたりは、

 それはそれは、うっそうとした(ふる)()()いしげり、

 (ひる)でも(くら)く、()()もよだつほど、(しず)まりかえった(ところ)でありました。
   ある(とし)(あき)のことです。

  その()は、(あさ)からどんより(くも)り、 しだいに(くも)(なが)れが(はや)くなり、

 いつしか、どす(くろ)(くも)(そら)いっぱいおおい、 (あめ)(ふり)(はじ)めました。

 (かぜ)(いきお)いをまし、だんだん(つよ)くなってきました。
  大田子(おおたご)家々(いえいえ)では(はや)くから風雨(ふうう)にそなえ、

 みんなは(いえ)にとじこもっていました。

 しかし、風雨(ふうう)ははげしくなり、

 谷間(たにま)(なが)れる(ちい)さなせせらぎの(みず)かさも(ふえ)え、

 (いわ)をかみ、(いし)をくだき、ぶつかり()(おと)は、

 不気味(ぶきみ)さを(ます)すばかりでした。
   ()()れかかった(ころ)

 危険(きけん)()った村人(むらびと)たちは、避難(になん)(はじ)めました。

 はげしい風雨(ふうう)とともに、 ()一気(いっき)洪水(こうずい)となって(たに)をうずめ、

 作物(さくもつ)(みの)田畑(たはた)()(なが)し、

 村里(むらざと)家々(いえいえ)におそいかかってきました。
   人々(ひとびと)は、(くら)やみの(なか)()げまどい、

 ()けを(もと)め、あまりの(おそ)ろしさに()(さけ)びました。

 (おそ)ろしい自然(しぜん)(ちから)には()てず、

 自分(じぶん)()安全(あんぜん)(まも)ることがやっとのことでした。
   人々(ひとびと)恐怖(きょうふ)におののき、右往左往(うおうさおう)している(とき)でした。

 あまりの豪雨(ごおう)に、白山権現(はくさんごんげん)岩山(いわやま)大木(たいぼく)()(はじ)めました。

 「ドドーン。」

 と、いう(おと)は、地面(じめん)をゆるがし、(おそ)をますます(ふる)えあがらせました。
  「もうだめだ。」

 「白山(はくさん)が、(おこ)()したんじゃ。」 

 「白山(はくさん)をそまつにした(もの)がいるんじゃ。」

 と、人々(ひとびと)不安(ふあん)は、つのる一方(いっぽう)でした。
  (いのち)からがら(なん)()れた人々(ひとびと)は、

 まんじりともせず、一夜(いちや)()ごしました。

 風雨(ふうう)もやんで、(ねむ)けまなこを こすりながら (そと)()人々(ひとびと)は、

 (おどろ)いてしまいました。
  (なん)という(あれ)れようでしょうか。

 あとかたもなくなった(いえ)

 (なが)された土地(とち)

 (うし)(うま)のふくれあがった死体(したい)
  そして、白山権現(はくさんごんげん)大木(たいぼく)十数本(じゅうすうほん)(たお)れ、

 ()(かげ)もなく(かわ)わり()てていました。

 人々(ひとびと)は、(かな)しんでばかりいられず、

 (かわ)わり()てた(土地(とち)復旧(ふっきゅう)にとりかかりました。
  ところが、その(よる)のことです。 

 ()ふけとともに、つかれきった人々(ひとびと)が、寝静(ねしず)まった(ころ)

 白山権現(はくさんごんげん)の方から()()れない異様(いよう)なかけ(ごえ)()こり、

 それはそれは(おお)きな(さけ)(ごえ)でした。
  「いったい、何事(なにごと)がおきたのだろう。」 と、

 人々(ひとびと)は、そのかけ(ごえ)をじっと(いていました。

 夜明(よあ)(ちか)くになると、

 いつの()にか、その(こえ)()えるように(こえなくなりました。
  (つぎ)(あさ)早々(はやばや)と めをさました人々(ひとびと)は、

 白山権現(はくさんごんげん)(まつ)ってある(やま)()てびっくりしました。

 (なん)ということでしょう。 

 もう、二度(にど)()ることは出来(でき)ないと

 あきらめていた あの(たお)れた(ふる)大木(たいぼく)が、

 天高(てんたかく)くそびえ()っているだけでなく、 白山権現(はくさんごんげん)のあたり一面(いちめん)も、

 すっかりもとの姿(すがた)になっているではありませんか。
  あまりのはなれわざに人々(ひとびと)は、 

 「白山(はくさん)さんが(ちから)をかしてくれたんじゃ。」 

 「白山(はくさん)さんがみんなを(まも)ってるんじゃ。」

 と、口々(くちぐち)()い、両手(りょうて)()わせ、

 ひたすら、おじぎをしているのでした。
  その()村人(むらびと)は、

 毎年(まいとし)のように白山権現(はくさんごんげん)のまつりを盛大(せいだい)(おこな)うようになり 

 「白山(はくさん)さん」

 と、()んで、信仰(しんこう)(ふか)くするようになったということです。

 (いま)も、白山妙理大権現(は くさんみょうりだいごんげん)はやさしく(しず)かに洞窟(どうくつ)から、大田子(おおたご)人々(ひとびと)見守(みまも)っているのです。
扁額(へんがく) 円成寺 本殿(えんじょうじ ほんでん) 六地蔵(ろくじぞう)さん

 

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