25.きつねと 源三(げんぞう)じいさん

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  西伊豆町(にしいずちょう)


















この(はなし)は、

安良里(あらり)(つた)わっている

むかしの話です。
  むかし、むかし、安良里(あらり)天坂(あまさか)に、

 源三(げんぞう)じいさんという、(むら)でもたいへん(ちから)もちで、、

 がんこ(もの)のおじいさんが()んでいました。
  田子坂(たごさか)に、きれいな(むすめ)()けて()て、

 (たび)(ひと)(こま)らせていることを()いて、

 いつか、()けの(かわ)をはがしてやろうと、(かんが)えていました。
  ある(つき)(あか)るい(ばん)源三(げんぞう)じいさんは、

 しょいこを()にして、田子坂(たごさか)(のぼ)って()きました。

 (みち)には、(すぎ)大木(たいぼく)が、うっそうとしげっていました。

 また、青黒(あおぐろ)(いろ)をした(ぬま)が、不気味(ぶきみ)(しず)けさをしていました。
   源三(げんぞう)じいさんは 「あっ。」 と、

 ()って(あし)をとめてしまいました。

 (いま)まで、()づかなかった(かわ)のほとりに、

 あねさんかむりの旅姿(たびすがた)をした、(うつく)しい小娘(こむすめ)が、

 着物(きもの)のすそを、ひざまで()げて、こちらを()いて()っていました。
   「おじいさん、すみませんが、そちらの(きし)に、(わた)してくださいな。」

 と、あわれっぽい(こえ)()いました。 

 源三(げんぞう)じいさんは 「さあて、いよいよ、()おったかい。」 

 と、(なに)くわに(かお)をして小娘(こむすめ)()ていました。
    「よし、よし、(いま)、おれが(わた)してやるわい。」 と、

 ()いながら、()こう(きし)まで、(かわ)(ある)いて()きました。

 「さあ、(ねえ)さん、おれの背中(せなか)におんぶしな。」 

 と、()いながら、()ってきた(あら)なわで (むすめ)(からだ)をぐるぐる()きにし、

 自分(じぶん)(からだ)にゆわいつけてしました。
   源三(げんぞう)じいさんは、急(きゅう)山道(やまみち)を、あともみずに、ささっと(ある)()しました。

 「ばあさんや、お(きゃく)さんだよ。」 と、

 ()いながら、(むすめ)背中(せなか)からおろしました。

 そして、(いえ)一番 大(いちばん おお)きい(はしら)に、しばりつけてしまいました。
  源三(げんぞう)じいさんは、物置(ものおき)から(ふと)(つえ)()ってきて、 

 「これ、正体(しょうたい)をあらわせ。」

 と、()いながら、何回(なんかい)何回(なんかい)(むすめ)を、(つよ)くいためつけました。
  (むすめ)は 「いたい。いたい。たすけてー。」 と、

 悲鳴(ひめい)をあげました。

 「おじいさん、もう、いたずらはしませんから。」 と、

 ()きながら、あやまりました。
 おばあさんは、かわいそうに(おも)って、(なわ)をといてやりました。
  すると、(むすめ)は、みるみるうちに、(おお)きな(ふる)きつねになりました。

 源三(げんぞう)じいさんは、 「いいか、二度(にど)(わる)さをするでないぞ。」 と、

 やさしい(こえ)で、()いました。

 きつねは、一つ、二つ、こっくりと(あたま)をさげると、(やま)(ほう)()げて()きました。

 それから、ここを背負登(せぼうと)と、呼ぶようになりました。

 
 
え  長島  さおり

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