25.不動明王(ふどうみょうおう)加護(かご)

               




(はなし)場所(ばしょ) ・・・  西伊豆町(にしいずちょう)


















(いま)から何百年(なんびゃくねん)(まえ)のお(はなし)です。

その(ころ)は、まだ(りく)交通(こうつう)

発達(はったつ)していませんでしたので、

伊豆(いず)(みなと)は、

(おき)(とお)(ふね)のひなん(こう)として、

重要(じゅうよう)役目(やくめ)をしていました。
   その(ころ)は、まだ(りく)交通(こうつう)発達(はったつ)していませんでしたので、

 伊豆(いず)(みなと)は、(おき)(とお)(ふね)のひなん(こう)として、重要(じゅうよう)役目(やくめ)をしていました。

 幕府(ばくふ)年貢米(ねんぐまい)(はこ)(ふね)各地(かくち)特産物(とくさんぶつ)(あきな)(ふね)などが、

 風待(かざまち)をしたりするために、伊豆(いず)(みなと)にたくさん(はい)っていました。
   ある(ふゆ)のことです。 

 (おき)(とお)っていた尾州(びしゅう)(いま)愛知県(あいちけん)西(びし))の大船(おおぶね)が、(おお)しけにあって、

 田子(たご)(みなと)避難(ひなん)することになりなりました。
   この()は、(つよ)(かぜ)()()れ、

 (しろ)(なみ)は、()をむき()して何回(なんかい)(ふね)をおそい、

 (ふね)はまるで()()のように波間(なみま)にゆられて、

 それは、それは、大変(たいへん)航海(こうかい)となってしまいました。
   「面舵(おもかじ)をとれ!。」  「それ、()(かじ)だ。」 と、
 船頭(せんどう)のかん(だか)(こえ)が、あたりにひび(わた)っている(とき)でした。

 ゆれ(うご)(ふね)にのっていた若者(わかもの)が、あやまって(うみ)()ちました。

 そして、荒波(あらなみ)にのまれ、()いては()え、()えては()き、しだいに、

 (ふね)から(とお)ざかってしまいました。
   仲間(なかま)は 「おーい! おーい!」 と、

 (ちから)いっぱいの(こえ)をはりあげて()(つづ)けましたが、

 とうとう、どこかへ()えてしまいました。

 ()()れる(うみ)(うえ)のことですから、どうすることもできません。

 仲間(なかま)たちは、若者(わかもの)のために、

 (ふね)()んであった小舟(こぶね)を一そう(なが)してやりました。
   船頭(せんどう)をはじめ、仲間(なかま)たちは、うしろがみを()かれる(おも)いで、

 めざす田子(たご)(みなと)()かって

 必死(ひっし)になって(ふね)をこぎ(つづ)けました。

 いつもの船宿(ふなやど)をとったみんなは、その(よる)

 重苦(おもくる)しいふんいきの(なか)で、(うみ)()えた若者(わかもの)通夜(つや)をしました。
   「どんなに(つめ)たい(おも)いをしていることだろう。」 

 「かわいそうなことをしたなあ。」

 と、ひっそりと(はな)()わしていました、

 (そと)は、西風(にし)がおさまらず、

 ピューピューとうなる砂風(すなかぜ)があれくるっていました。
  ところが、

 人々(ひとびと)が、寝静(ねしず)まった夜半過(やはんす)ぎのことです。

 (つよ)(かぜ)(おと)にまじって、しきりに(ひと)()(こえ)が、

 かすかに()こえてくるのではありませんか。
  「(いま)「どき、何事(なにごと)だ。」  「だれだ。」 と、

 (いえ)(ひと)が、おそるおそる雨戸(あまど)をあけてみました。

 「あっ!」  おどろきの(こえ)をあげて、

 (いえ)(ひと)は、その()にすわりこんでしまいました。
  物音(ものおと)()づいて()きてきた船主(ふなぬし)船子(ふなこ)も、

 あまりのことに、

 ただぼうぜんとして、その()にくぎづけとなってしまいました。

 雨戸(あまど)(そと)に、(さむ)そうに(たあ)っているのは、

 あの荒海(あらうみ)にのまれ、

 行方(いくえ)がわからなくなった若者(わかもの)姿(すがた)でした。
  「おまえは、どうして、ここまで・・・・。」 

 と、(こえ)をふるわせて()きました。

 「へ(さき)(くろ)(ふね)()せられて()たんだ。」 

 と、若者(わかもの)は、ことば(すくな)()いました。
  いつとはなしに、若者(わかもの)のそばに()ってきた仲間(なかま)は、

 ただ、かたずをのんで、若者(わかもの)見守(みまも)るばかりでした。

  「いったい、どうして無事(ぶじ)に たどり()いたんだい。」

 「おい、(からだ)がぬれていないなあ。」
   と、不思議(ふしぎ)そうに()仲間(なかま)のことばを さえぎるように、

 「わしは、常日頃(つねひごろ)から、不動明王(ふどうみょうおう)(しん)じているんだ。 

 三度(さんど)食事(しょくじ)に 一はしの米飯(めし)(うみ)(なか)()げてやるんだ。

 不動明王様(ふどうみょうおうさま)が、(すく)ってくれたんだ。」 

 と、ゆっくりとしたことばで(はな)しました。
  それから(のち)不動明王(ふどうみょうおう)のことは、(うみ)(おとこ)たちに(ひろ)がり、

 田子(たご)人々(ひとびと)(なか)にも、あつく信仰(しんこう)されるようになったと()うことです。
不動明王(ふどうみょうおう)さまより田子(たご)(みなと)のを()
狛犬(こまいぬ) 本殿(ほんでん) 狛犬(こまいぬ)
石仏(せきぶつ)さん 扁額(へんがく) 不動明王(ふどうみょうおう)さま
石仏(せきぶつ)さん

 
 
え  鈴木  千津

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